この本の使い方
この部の 1 / 1 章 ・ 全体で 1 / 22 章 ・ 読了目安 8 分
- 自分が今どの立場でこの本を読むべきか判断できる
- 新人側の教科書と対応させて読める
この本は、新人やインターンを受け入れる側のための教科書です。
コードが書けることと、人を立ち上げられることは、別のスキルです。 前者がどれだけ得意でも、後者は自動的にはついてきません。 そして多くの現場では、後者を教わる機会がないまま「じゃあ面倒見て」と言われます。
この本は、その「面倒を見る」の中身を分解して書いたものです。
誰のための本か
- 新人・インターン・中途の受け入れを担当することになった人
- チームにメンター制度を作ろうとしている人
- 過去に受け入れがうまくいかず、原因が分からなかった人
役職は問いません。入社2年目でも、3ヶ月後に入ってきた人から見れば先輩です。
もう一冊の本との関係
この本には対になる教科書があります。新人側が読む 「プログラマのための IT 教科書」です。
| 新人側の本 | この本 | |
|---|---|---|
| 読む人 | 入ってきた人 | 迎える人 |
| 章数 | 全75章 + 用語集162語 | 全22章 |
| 扱うもの | 道具・技術・設計・安全性・運用 | 準備、教え方、タスク、レビュー、1on1、制度 |
| 目的 | 自分で動けるようになる | 相手が自分で動けるようにする |
新人側の本は、次の構成になっています。渡す範囲を決める時の地図として使えます。
| 部 | 内容 | いつ渡すか |
|---|---|---|
| 第0部 はじめに | 学生と実務の違い / 心構え / 社会人としての規律 | 初日 |
| 第1部 開発者の道具箱 | シェル / 正規表現 / vim / Git / GitHub / Docker / 開発環境 | 初週 |
| 第2部 開発の進め方 | 開発の流れ / コードを読む / デバッグ / 文章 / AI / ライセンス / アジャイル / 立ち振る舞い | 初週〜1ヶ月 |
| 第3部 コンピュータとネットワーク | バイト / 文字コード / プロセス / Linux サーバー / 計算量 / ネットワーク / HTTP / 規格 | 1〜3ヶ月 |
| 第4部 プログラミングとクライアント | JavaScript / TypeScript / Go / HTML・CSS / UI/UX / React / モバイル | 1〜3ヶ月 |
| 第5部 サービスをつくる | gRPC / API 設計 / DB・SQL / ストレージ / キュー / バッチ / k8s | 業務と並行 |
| 第6部 設計と品質 | ドメイン / DDD / 設計 / 読みやすさ / テスト / 見つけにくいバグ | 業務と並行 |
| 第7部 安全性 | 脆弱性 / 認証 / 暗号 / セキュア設計 / 法律 / 社会的責任 | 業務と並行 |
| 第8部 動かし続ける | DevOps / クラウド / Terraform / CI/CD / 監視 | 業務と並行 |
| 第9部 通しで作る | ハンズオン(サービスを1本作る) | 一通り読んだ後 |
新人がどこで詰まるかを具体的に知りたい時は、新人側の本を読んでください。 受け入れる側が一度自分で通してみるのが、一番早く実態をつかむ方法です。 「これは1日で終わるだろう」と思っていた章が、実はそうでもないことに気づきます。
渡すだけでは読まれません。「あちらの本の第1部を今週中に」のように範囲と期限を区切って渡し、 1on1 で「どこが分からなかったか」を聞いてください。 分からなかった箇所は、あなたのチームの説明が足りていない箇所とだいたい一致します。
| 章 | なぜ最優先か |
|---|---|
| GitHub で共同作業する | Issue → ブランチ → PR → レビュー → マージの一周。これが回らないと初日から作業が止まる |
| Linux サーバーの歩き方 | ログの場所、sudo、systemd。「本番を見てきて」と言われた時に動けるようになる |
学生が最も持っていないのがこの2つです。言語やフレームワークは独学で触れていても、 チームで変更を取り込む手順とサーバーに入って調べる手順は経験しようがありません。
この本の立場
3つの前提を置いています。
1. 立ち上がりの速さは、本人の能力より環境で決まる
同じ人でも、環境構築ドキュメントが整っているチームと、 口伝で伝わるチームとでは、最初の1ヶ月の進み方がまったく違います。 「あの子は優秀だ/そうでもない」という評価の何割かは、実は受け入れ側の準備の差です。
2. 教えないことも設計する
全部教えるのは親切ではありません。情報を出しすぎると、何が重要か分からなくなります。 何を教え、何を意図的に教えないかを決めるのが設計です。
3. 正解は1つではないが、明らかな失敗はある
「答えを教えるべきか」のような問いに唯一の正解はありません。状況によります。 一方で、3日詰まっているのに誰も気づかない、 レビューが1週間返らない、最初のタスクがドキュメント修正だけで2週間—— これらは状況によらず失敗です。この本は、まず明らかな失敗を潰すことを優先します。
どこから読むか
| 状況 | 読む場所 |
|---|---|
| 受け入れが決まった。まだ来ていない | 第1部・第2部 |
| もう来ている。今まさに教えている | 第3部・第4部 |
| レビューや 1on1 のやり方に迷っている | 第5部 |
| うまくいっていない感触がある | 第6部 |
| 自分の負担が限界に近い | 第7部 |
順番に読む必要はありません。今困っているところから読んでください。
それは正しい感覚です。受け入れは、忙しい時期に限って発生します。
ただ、準備に使う数時間と、準備しなかった場合に後から溶ける時間とでは、 後者の方がはるかに大きくなります。最初の3ヶ月で何が決まるかはその話です。